- 文法や構文が全く覚えられない
- 英文法を効率的に理解するいい方法をないかな
そんなお悩みありませんか。
文法が苦手な英語学習者なら、誰でも悩む問題ですよね。
この記事を書いているmikiと申します。
英会話や英文法などの様々な英語学習を経験し、TOEICなどの資格試験にも挑戦してきました。
これまで、英文法を効率よくマスターするために、さまざまな教材や学習法を試しました。
苦手な英文法をなかなか習得できず、一時、英語学習を諦めかけた経験もあります。
そんな経験をした私が、第二言語習得論の1つ、自然順序仮説について徹底解説します。
この理論を知ることで、少しでも効率よく英文法をマスターして、学習を続けるモチベーションの維持につなげていきましょう。
第二言語習得論(Second Language Acquisition,SLA)とは、第二言語(外国語)を習得する方法について科学的に解明する学問です。
この学問は比較的新しく、1960年代からさかんに研究され始めました。
その中の1つである自然順序仮説は第二言語の習得には、一定の順序があるとする説です。
この仮説は、英語をどのような過程で習得していくのかを体系的に示し、言語の本質そのものの習得方法に重点を置いています。
今日の研究では、多くの人が苦手とする部分がどこなのか、英語学習者が習得しにくい部分についてもわかってきました。
英文法をより効率よく覚えるために、知っておいてほしい仮説です。
それでは、この仮説について詳しく解説していきます。
自然順序仮説とは?
自然順序仮説とは、文法を学ぶ学習者の年齢、母語、地域などが異なっていても、習得には一定の順序があるとする仮説です。
1970~1980年代にアメリカの言語学者クラッシェンが提唱した第二言語習得論で提唱した5つの仮説の1つです。
この仮説は1970年代にブラウン(1973)などの子供の第一言語習得の研究に基づきます。
第一言語(母語)を習得する時に、子供は類似の順序で言語形式や規則を習得するとする仮説です。
例えば、英語では、子供は進行形のingや複数のsや能動態を3人称単数現在の動詞の-sや受動態よりも早く習得するとされています。
大人も子どもと同じように習得過程をたどっていくとされています。
デュレイとバート(1974)の研究でも第二言語の習得も第一言語の習得の時と同じように自然的順序があるとされました。
子どもは文法の規則などを理解しなくても、自然に言語を習得していきます。
大人もその順序に従って習得していけば、スムーズに覚えられる可能性が高まるとして研究が進められました。
自然順序仮説における英文法の習得順序
それでは、英文法では具体的にどのような過程で習得されていくのでしょうか。
クラッシェンは次のような順序をあげています。
助動詞(can ,will)、冠詞(the, a, an)
不規則動詞の過去形(go→went, see→saw)
規則動詞の過去形(-ed)、動詞三人称単数現在の-S(plays)、所有格の’s(Taro‘s)
英語学習者が自然なコミュニケーション活動を通して言語を習得すれば,上記のような順序を示すとしました。
1974年に研究者デュレイとバートはさらに細かく文法習得の順序を示しました。
2:冠詞 a, an, the
3:進行形 ing
4:連結辞の短縮形
5:名詞複数形のs, es
6:規則動詞の過去形-ed
7:不規則動詞の過去形 went ,sawなど
8:名詞複数形のes
9:所有格 ‘s
10:三単現
さらに、日本語話者についての習得順序の研究によると次の通りです。
2:進行形ing
3:所有格 ‘s
4:複数形s , es
5:助動詞can, may
6:動詞不規則過去形went, sawなど
7:定冠詞
8:動詞規則過去形-ed
9:三単現
10:不定冠詞a, an, the
それぞれを比較すると、日本語話者はクラッシェンらが提唱した順序とは異なっています。
例えば、所有格の習得が早くなっています。
‘sは、日本語の助詞「の」に似た働きがあるので、日本人学習者にとっては、わかりやすく、覚えやすい表現です。
反対に不定冠詞(the, a, an)の習得は遅くなっています。
これは英語学習者の方なら、何となくわかると思いますが、日本語にはない文法なので、上級者でも使い忘れや使い分けが難しく、習得するのが難しいとされます。
さらに、スペイン語話者を対象とした研究でも、クラッシェンが提唱した順序や日本語話者が習得する順序とは違う別の習得順序となっています。
このように、クラッシェンらが提唱した説と実際の習得順序は違うようです。
そして、自然順序仮説に対して、様々な研究結果から疑問が投げかけられるようになりました。
自然順序仮説に対する疑問
「私は、この仮説のような過程で英語を覚えていないな。」とここまで読んでいただいた方の中には、そう思った方もいるのではないでしょうか。
前に触れたように、日本語話者に限定した習得順序に関する研究結果も仮説とは違う内容を示しています。
結論からいうと、全てにおいて自然順序仮説が当てはまるわけではないようです。
後の研究から習得順序は、母語の影響を少なからず受け、習得に時間がかかったり、順序が入れ替わったりする場合があるとわかってきました。
主に3つの理由から自然順序仮説について疑問が投げかけられています。
詳しく見ていきましょう。
大人は子どもと同じ順序で習得するわけではない
多くの場合、大人は、子どものように無意識に与えられた環境の中で自然に身に着ける環境ではないでしょう。
確かに大人は子どもと違い、第二言語を習得するのは意識的に、目的を持って行う場合が多いようです。
また、大人はどのような環境で学ぶのか自分で選べますし、学ぶ順番も自分で選べます。
そのため、自然順序仮説とは違う習得順序となるのは自然ではないでしょうか。
母語の影響を受ける
上記の表を比較した通り、日本人学習者が習得する順序はクラッシェンらが提唱した順序と異なっています。
日本語の文法にある(近い)表現は習得が早くなりますが、日本語にはない文法や表現は習得が遅くなります。
英語学習者なら、感覚的に理解できるのはないでしょうか。
このように第二言語の習得が母語の影響を受けるのを専門用語では「言語転移」と呼びます。
言語転移には第二言語の取得にいい影響を与える「正の転移」とマイナスの影響を与える「負の転移」があります。
「正の転移」の具体例としては、所有格’sの習得があります。
Taro’s pen「太郎のペン」のように母語にも同じまたは似たような表現があれば、習得が早くなります。
「負の転移」の具体例としては、英語にはない誤った文法構造の文章を作ってしまうことです。
例えば
私の学校は制服です。
というように誤った文法で文を作りがちです。
これは、日本語が「AはBだ」という文法構造が発達している影響により、英語にはない日本語の文法構造をそのまま当てはめてしまうからです。
正しくは「My school is in uniform.」
日本語は英語と文法や発音などが大きく違うため、負の転移の影響を受けやすくなります。
似た文法や発音などがあるヨーロッパ系言語(フランス語やスペイン語など)の学習者たちよりも日本人が英語の習得に苦戦する大きな原因の一つです。
負の影響をどれだけ抑えるかが英語を効率よく取得するための重要な鍵となります。
教える方法に結びつかない
習得する順序がわかっても、英語学習者にとって、効率よく習得できる教え方とは別だとする指摘です。
習得順序の通りに教えてもスムーズに理解できるわけではないようです。
クラッシェンもこの順序通りに教える必要はないと述べています。
現在に至るまで、効率よくスムーズに英文法を習得できる方法などについては研究が進められています。
特に日本人学習者にとって、日本語にはない文法や表現などを習得するのに苦戦する方が多いようです。
教える順序というよりはその文法が意味する概念、使い分けをどのように習得していくのかが課題となっています。
特に英語は日本語と文法構造や発音などが大きく異なっており、日本語で概念や使い分けを理解するのは難しいところが多々あるからです。
覚える順序だけではわかりやすい教え方に結びつけるのは困難と言えるでしょう。
英語学習方法における自然順序仮説の活かし方
自然順序仮説が理解できたところで、私たち英語学習者はこの理論をどのように活かしていけばいいのでしょうか。
近年、新しい英語学習法や教材の開発が進められ、英語学習の選択肢が格段に増えました。
私たちもこの理論の元に開発された教材などで学習し、恩恵を受けているかもしれません。
そこで、自然順序仮説がもたらした3つのメリットを考えます。
- 他の学習者がどのような過程で英語を習得していくのかが体系的に整理された点
- 日本人学習者にとって、習得が難しい部分はどこなのかが、解明され、より効率的な学習に役立つような研究が進められた点
- 言語に習得順序があるということは、ネイティブにとっても習得しやすいものとそうでないものがある
1番目、2番目のメリットはわかりやすい教え方や対策、新しい学習教材などを生み出すきっかけとなりました。
英語学習者にとっても、習得が難しい部分を事前に予測でき、学習計画が立てやすくなりました。
難しい部分が出てきても、様々な教材からより自分に合うわかりやすい教材を選び、理解が早く進められるかもしれません。
3番目のメリットはネイティブにとっても、私たちと同じように文法については、難しいものは難しい、易しいものは易しいのです。
まとめますと、英文法を効率よくマスターするために、自分に合う学習計画を立てる際にこの仮説の理論は役立てられそうです。
事前に習得が難しい部分を予測をつけ、教材選び、学習方法の検討に役立てていきましょう。
まとめ
ここまで第二言語の習得には年齢や母語にかかわらず、一定の順序で文法を習得するとする自然順序仮説について見てきました。
ネイティブも文法については段階を追って習得しているのがわかりました。
第二言語習得において、自然順序仮説の全てがあてはまるわけではありません。
大人の英語学習は母語の影響を受けやすく、習得に時間がかかる文法などを知っておけば、焦らず、じっくり理解していこうとする気持ちも芽生えます。
学習に対するモチベーションが下がりにくく、維持しやすくなるでしょう。
英文法を全て完璧に理解するのは理想的ですが、細部まで完璧を目指さず、常に文法の全体像を意識しながら、体系的に学ぶのを意識すると良いでしょう。
あなたが英語を効率よく学べる理論を知って、今後の英語の学習計画を立てる際に、お役立ていただけると幸いです。
これからもあなたのペースで楽しみながら、英語を学んでいきましょう。
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