ビートルズの名曲「イエスタデイ(Yesterday)」は、ポール・マッカートニーが弾くアコースティック・ギター1本と弦楽四重奏の伴奏だけの静かな曲です。
私がラジオで初めてこの曲を聴いたときは、それまでのビートルズのギター中心の賑やかな、どちらかというとガチャガチャした派手なサウンドとは何か違った厳かなものを感じました。あたかも宗教曲のような感じを受けました。弦楽四重奏によるテンポが遅めで、ゆったりした曲調がそういう厳かなものを感じさせたのだと思います。
数多あるビートルズの曲の中で、最も有名な曲の一つで、「世界でもっとも多くカバーされた曲」としてギネスに認定されています。
歌詞には、昨日は想像もしていなかった、突然の「大切な人との別れ」を嘆く様子が描かれています。大切な人は恋人のように思われがちですが、ポールは、この曲は14歳の時に死別した母親への想いを綴ったものだと述べています。
この記事では、ビートルズの「イエスタデイ(Yesterday)」の英語歌詞・和訳・意味などを、楽しく解説していますので、最後までご覧になってください。
ビートルズの名曲「イエスタデイ(Yesterday)」ができた背景
この曲については後にポール自身の回想が次のように伝わっています。
ある朝、ポールは夢の中で流れたメロディーを元に曲を作りました。つまり夢の中で作曲したということです。「あまりにも簡単に作曲できたので、どこかで聴いたことのあるメロディーじゃないかと心配した」とポールは後に語っています。
曲に歌詞が付くまでの間、とりあえず“Scrambled Egg(スクランブルエッグ)”というタイトルを仮に付けていました。後に”Yesterday”というタイトルに変えられました。
ビートルズの「イエスタデイ(Yesterday)」の作曲、ボーカル、演者は?
ポールがソロで歌った初めての曲としても有名です。レコーディングにはポールと弦楽四重奏のみが参加し、残りのメンバーは参加していません。
ロックバンドに弦楽四重奏を伴奏として導入するのは、当時としては全く新しい試みでした。それを初めて行ったのが、世界のロック界で最高の人気を得ていたビートルズだったのです。
ビートルズの「イエスタデイ(Yesterday)」の英語歌詞・和訳
Yesterday
昨日は
All my troubles seemed so far away
僕の悩み事なんかはるか遠くにあるように思われた
Now it looks as though they’re here to stay
いまそれらは目の前にあるかのようだ
Oh, I believe in yesterday
ああ、僕は昨日を信じる
Suddenly
突然
I’m not half the man I used to be
僕は昨日までの人間とは変わってしまった
There’s a shadow hanging over me
影が僕の上にのしかかってきたんだ
Oh, yesterday came suddenly
そんな昨日が突然目の前にやってきたんだ
Why she had to go
なぜ彼女は行かなければならなかったのか
I don’t know, she wouldn’t say
僕は知らないし、彼女も言おうとしなかった
I said something wrong
何か悪いことを僕がしゃべったのだろう
Now I long for yesterday
いま僕は昨日を恋い焦がれている
Yesterday
昨日
Love was such an easy game to play
恋を演じることは本当にたやすいゲームだった
Now I need a place to hide away
いま僕は身を隠してしまいたいほどいる場所がない
Oh, I believe in yesterday
ああ、僕は昨日を信じる
Why she had to go
なぜ彼女は行かなければならなかったのか
I don’t know, she wouldn’t say
僕は知らないし、彼女も言おうとしなかった
I said something wrong
何か悪いことを僕がしゃべったのだろう
Now I long for yesterday
いま僕は昨日を恋い焦がれている
Yesterday
昨日
Love was such an easy game to play
恋を演じることは本当にたやすいゲームだった
Now I need a place to hide away
いま僕は身を隠してしまいたいほど身を置く場所がない
Oh, I believe in yesterday
ああ、僕は昨日を信じる
ビートルズの「イエスタデイ(Yesterday)」のキーとなる英文法・英単語を解説
この曲は過去時制と現在時制が互い違いに出てくるので、その違いを考慮して訳し分けなければなりません。それぞれの文頭にはそのことがわかる語句”yesterday”(過去時制)と”now”(現在時制)がついていますので、容易に区別できると思います。
(過去時制)
Yesterday All my troubles seemed so far away
昨日僕のすべての悩み事ははるか遠くにあるように思われた
(現在時制)
Now it looks as though they’re here to stay
いまそれらはここに留まっているかのように思える
(現在時制)
Oh, I believe in yesterday
ああ、僕は昨日を信じる
“all my troubles”は「すべての悩み事」、”seemed ~”は後ろに形容句を伴って「~のように思われた」、”so far away”は「はるか遠くに」となります。
ここで注意すべき点は、”all my troubles”、日本語風に「オールマイトラブルズ」と発音すると英語らしく聞こえません。”l”は喉の奥で「ウ」のように言うのです。最後の「ズ」は次に”seemed”の”s”があるので消されます。ですから極端に言うと「オーマイツァボー」のように4節で発音するといいでしょう。原曲もここは四分音符4つで書かれています。
次に”seemed so”ですが、四分音符2つですから「シームドソー」というとうまくリズムに乗れません。次の”s”に続くのですから「ド」は消し、「シームソー」の「ム」も唇を閉じただけの無音のエムだけにしておくとそれらしく聞こえます。
“it looks”は次に節を伴って「~に見える、思える」、”as though”は「まるで~かのように」で、この後には仮定法が続きます。”they’re”はここは仮定法なので過去形で、”they were”の略です。
この”they”は前の行の”troubles”であることは複数形だから明らかですね。
“believe in ~”は「~の存在を信じる」ですが、ここは昨日までの自分を懐かしむという意味に解釈できます。そのわけは次の節で明らかになります。
(現在時制)
Suddenly, I’m not half the man (過去時制)I used to be
突然、僕はいままでの自分の半分にも満たない存在になってしまった
(現在時制)
There’s a shadow hanging over me
影が僕の上にのしかかっているんだ
(過去時制)
Oh, yesterday came suddenly
ああ、昨日が突然目の前にやってきたんだ
次の節で書かれることになる彼女に振られた自分を暗示しています。
“not half the man”は「半分にも満たない男」、転じて「もうこの世にいる価値のない男」になってしまったという心情を表しています。なぜかというと振られたからですね。
“I used to be”は前の”man”にかかっていて「これまでの自分」、”used to~”は「過去~していた」という意味で、~には動詞の原形が入ります。
ここ”used to”の発音は「ユーズドトゥー」ではなく、「ユーストゥー」のようになります。日本語のように「ユーストトゥー」と発音すると「ト」(英語の”t”の音)が重なって発音しにくく、前の”t”をひとつ省略して発音するのです。
“hanging over me”は「僕の上を覆っている」ここは前節の”troubles”を受けて「前はなかった悩み事がいまは僕の上を覆っている」というような意味と解釈できます。
ここも次の節に先んじて自分の身に何か不吉なことが生じたことを表しています。
(過去時制)
Why she had to go
なぜ彼女は行かなければならなかったのか
(現在時制)
I don’t know, (過去時制)she wouldn’t say
僕は知らないし、彼女も言おうとしなかった
(過去時制)
I said something wrong
僕は何か悪いことを言ったのだろうか
(現在時制)
Now I long for yesterday
いま僕は昨日を恋い焦がれている
“I don’t know”は「昨日彼女が出て行ったことの理由をいまも知らない、わからない」と現在形で言い、”she wouldn’t say”は”she won’t(=will not) say”の過去形ですが「彼女は決して言おうとしなかった」と強い拒否の意味になります。”will”はこのように否定形で使われると強い否定の意思を表します。
“long for ~”は「~を恋い焦がれる」で、振られて不幸になってしまったいまに対して、振られる前の幸せだった昨日に戻りたいという願いを表しています。
(過去時制)
Yesterday Love was such an easy game to play
昨日、恋はあまりにも演ずるのが簡単なゲームだった
(現在時制)
Now I need a place to hide away
いまは身を隠す場所が必要なほど恥ずかしい
“such an easy game to play”は字義通りに解釈すると「演ずるのにとっても簡単なゲーム」、いま思うと恋はとっても簡単なゲームだったように感じるのです。そう思っていた自分が振られてしまった。だからそんなにも簡単に演じられるゲームではなかったということを言いたいのです。
それが「そんなことを思っていた自分がとっても恥ずかしい、身を隠す場所がほしい」と続くわけです。
まとめ―きれいな旋律に隠された悲哀の感情
キーとなる語句は”yesterday”や”used to be”のような過去を表す単語・連語、および”now”のように現在を表す単語を元に解釈すると意外と簡単に意味がとれるでしょう。
歌詞の意味はそれほど難しくはありません。恋人に振られた、あるいは母親に死なれた自分を歌った曲と思って間違いありません。
歌詞に現れたポール・マッカートニーの優しい心情を推し量りながら歌ってみましょう。
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