コラム&耳寄り情報

羹に懲りて膾を吹かない(大事なことを大事にする。些事だけど声の大きなものに振り回されない。)

さて、bにいる人でこの漢字をちゃんと読める(書けなくてもいいです)人が
いるだろう?なんて思いながら。

正確なことわざは「羹に懲りて膾を吹く」。
「あつものにこりてなますをふく」と読みます。

語源は古代、春秋戦国時代の楚(そ)という国で、羹の熱いものに懲りた人が、反射的に
冷たい膾(なます)まで吹いて冷ましてから食べてしまった、ということで、
意味としては、一度失敗したことにこりて、度の過ぎた対応をしてしまうことを意味しています。

英語でも似たようなことわざがあって、

He that has been bitten by a serpent is afraid of a rope.
(蛇に噛まれた者は縄を怖がる)

A scalded cat fears cold water.
(煮え湯でやけどをした猫は冷水を恐れる)

なんてのがあるそうです。

今日は、ちょっと趣旨が違うのですがここから演繹して副題の
「大事なことを大事にする。些事だけど声の大きなものに振り回されない。」ということを
一緒に考えてみたいと思います。

私達が何かルールを変えたり、新しい制度を作るときやはりこの
羹的な経験がきっかけになることがあります。

極端な喩え話ですが生活保護という制度。
今では、受給者が220万人、つまり、日本人1億3000万人の単純計算で60人に1人が受給者と
なっています。

本来、こういう制度はセーフティーネットといって仕事をしたくでもできない人
(障害があったり、働きたくても働けない事情がある)を社会全体で守ってあげるためにできた制度です。

ところが、実際はどうかというと普通に働ける人が生活保護を使ってパチンコに行く人が後を絶たないですし、
何故か、外国人がたくさん受給してたりする一方で、本当の意味の弱者であるにもかかわらず受給できないで、
自殺してしまうような人がでてくるような問題もあるわけです。

これはどういうところに原因があるかというと、まさに、羹に対して反応し続けることを
繰り返してきた結果なんじゃないかなと思います。

どういうことかというと、例えば区役所などに行くと、生活保護の申請する場所で
結構大きい声で文句を言ってる人がいますが、そのままなし崩し的にハンコを押してしまったらどうでしょう?
声が大きい方が得だ、ということになりますよね。

一方、本当の弱者の方に限ってこういうところはおとなしいかもしれません。
結果として、声が大きくて、本来適格者じゃない人のほうが、本来制度として守ろうとしていた人よりも受給できる確率が
増えてしまうことがあるわけです。

私達のスクールでももちろんここまでじゃないけど、似たようなことってたくさんあると思います。

例えば、とあるお客様から希望があったとします。
それは、そのお客様だけ固有の問題なのかもしれないし、多くのお客様に共通の問題かもしれません。

難しいのは、そのお客様のために良いことが、残りの多くの方には影響がない。
あるいは、全体には悪影響になることもあるかもしれません。

ところが、やっぱり私達は目立つもの(羹)に対して反応してしまいがちです。
それが、お客様の多数や会社全体にとってどうなのか、ではなく、次またその少数のイレギュラーなケースで
自分が同じ経験をしたくないために、ということが優先しちゃうわけです。

このあたりは、山本七平の「空気の研究」という本を読んでいると似たような事例がたくさん出てきます。
この本では結果として、物事を相対的に把握しようとせず、目先の状況に個別対応しかできなかった事こそが、
日本人の弱点であり、それこそが、アメリカと戦って負けた理由だという趣旨のことも書かれていましたが、

うーん。
読んでいて悔しいながら、あたってるかも、
と思ったりします。

そうならないようにするためにはどうしたらよいでしょう?

それは、私達ひとりひとりが、常に「ここで重要なことは何だろう?」ということを頭のなかで
問い続けることです。そして、空気としては目先の状況対応する流れになってるときに、勇気を持って逆の対応もありかも、
という意見ができたり、判断をとれることです。

昔の人には、空気に対して「水を差す」という言葉がありました。
水を差すと空気は悪くなりますが、大事なことを大事にすること、の方が、その場の空気で
間違った方向に行くより大事ですよね。

私もこのことは常に気をつけないと、やってしまうことなので気をつけつつ、
問題はなるべく相対的に見ることで、1つの点に振り回されないようにしています。

経済学者のケインズのことばですが、

「I’d rather be vaguely right than precisely wrong.」

ということばがあります。
私は、この言葉が大好きなんですが、

日本語に訳すると、「自分は、正確に間違えるよりも、漠然と正しくありたい」とでもいいましょうか。

1つの目先のことに刹那的に対応して全体のバランスをおかしくするのであれば、
一部、確かに反対はあったとしても、大多数のバランスを取れる方が良いですよね。

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