これ、孔子の言葉なんですが、私の最も好きな言葉の一つです。
漢文読み下しをすると、「學びて思はざれば即ち罔(くら)く、思ひて學ばざれば即ち殆(あやう)し)」となります。
何がいいって、学ぶことと考えることのバランス感覚を絶妙にあらわしてるので
紹介させてもらいました。
世の中にはお勉強だけが好きな人がいます。
もちろん、好きじゃないより知識をたくさん入れていくことは大事なのですが、一方で、気をつけないと
その学んだ知識の背景にあることまで考えが及ばないので、現実の世界から乖離しちゃうこともありえるわけです。
私も例えばアメリカで学んだ金融の知識の一つにDCF法という企業や債権の価値評価方法がありまして、
日本でも2000年代初頭から大々的に導入されたものがあるんですが、これなんかは当時の物価が下落し続けているデフレという日本の状況では特に不良債権評価などでは導入すると全く正しくない評価が出てしまう方法なんです(詳しいことは省きますが)。でも、多分、「アメリカで今流行りの方法だからいいに違いない!」と思ってお勉強好きの人が「その方法論の適応がどのような環境下では役立つか、この方法を考えた人の思考背景」まで考えないで導入しちゃったんでしょう。
逆に、考えることだけというのも無理があります。
というのは、考えるということは今ある自分の中の知識や経験を元に思案するわけですから
知識そのものが足りなかったりすると、考えるにしてもどうしようもないわけですからね。
今、私達はたまたまお客様に英会話を上達するまでのお手伝いをすることについて生業としているわけです。
なかには、コンシェルジュとしてそこそこ英語が話せるようになってくると、「どうやったらもっと上手に話せるように(書けるように)なるだろう?」と思う人もいると思います。
そのレベルになっている人は、こんな質問をしてみるといいかもしれません。
「自分の普段の日本語での会話を振り返って、どれくらいのレベルの日本語を使えているだろうか?」
なぜなら母国語で話したり書いたりするレベル以上に、外国語が上手になることはまずないですから。
なので、意外とそのレベルまで英語が出来る人にとって、次に上達するための近道は多くの日本語の書籍を読んだり、違う分野の本を読んでみることで自分の知識を広めることが実は英語上達の一番の近道になることもあったりするわけです。
一方で、今の会話力があまりない人があれこれ英語学習法の本ばかり読んで考えていても
これまた意味がないですよね。こういう人は、まず、やってみる。詰め込んでみる。という作業が先にあるかもしれません。
学ぶ力を上げるためには、思考することが必要。
思考する力をあげるためには、学ぶことが必要。
この作用・反作用のダブルループが大事なんでしょう。
英語ではこの言葉を、
“To learn without thinking, one will be lost in his learning. To think without learning, one will be imperilled.”
と書くそうです。
“peril”とは名詞で「危機的な状況」とでも訳するのでしょうが、その動詞ですね。
今、ちょうど子どもたちに小学校3年生から英語を教えると言っていて、その要綱に
「高校3年生時には英語でディベートができるレベルまで目指す」と書いてるのですが、これなんかは、そもそも日本語でも
議論ができるレベルにならないのに、なんの議論をしてるのやら、ですよね。まさに、こういうことを考えている教育業界の人たちこそがしっかりと考えることを忘れちゃってるから、結論から強引に議論を持ち込んでしまっている悪しき例だと思います。
ところで、今、ちょうど映画化してブームになっている寄生獣のミギーというパラサイトが最後に
主人公のシンイチとお別れするときに、「しばらく情報をシャットアウトして、ここにある材料だけでやってみたくなったんだ・・・。
だから外面の活動を停止する」というシーンがあります。(まじめにこのシーン読んでると涙がでるんですが(笑))。
この漫画読んでない人はわからないと思いますが、ちょっとグロかわいいキャラの人間に寄生した勉強好きのミギー
(一日で日本語をマスターした)が、最後にお別れでいうセリフです。これは、多分、学びすぎちゃったからしばらく新しく知識を入れるのはストップして、それらを組み合わせて思考することに比重をあげる、という意味でしょう。
漫画で締めくくるのもなんですが、私達のような普通の人間はスーパー勉強のできる
ミギーじゃないので、常に学ぶことと考えることの比重を入れ替えしながら、両方のレベルを上げていくしかないでしょうね。
どうでもいいですが、今、映画館でやってるようなのでお勧めです(笑)。
今日の孔子の言葉を意識して見てると、また別の視点でこの漫画の奥深さが見えてきますよ。